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 ●第16回/The Professionals
実質的にセックス・ピストルズのサウンドの要だったギタリストのスティーヴ・ジョーンズと、リズムをひとりで支えていたドラマーのポール・クックが作ったバンド。サウンドはピストルズそのもので、ポール・クックのやや後のりのドラムが健在だ。ギターの音もヘヴィーだが、ピストルズにはなかったバッキングも多用しており、ポップな仕上がりとなっている。所々にピストルズ的なギターリフも登場し、ユーモアもたっぷり入っている。メロディも泣きがやや入り、次のアルバムが楽しみだったが、あっけなく解散した。今でいうならまさに“パワーポップ”なアルバムである。長い間CD化されておらず、99年3月にめでたくヴァージン・レコード創立25周年記念のオリジナル・アナログジャケットシリーズとして発売となった。

 ●第15回/R.E.M.
ジョージア州アセンズ出身のR.E.M.メジャー第2弾。まだ20代だったペケ・アモーキ氏が大プッシュしていて、聴いてみたらこれが凄い。何が凄いって“ヴェルヴェットアンダーグラウンド・ミーツ・バーズ!”という形容がぴったりなサウンドが凄い。低くこもるようなヴォーカルをバックに、キラキラしたギターのバッキング。もちろん12弦も炸裂していて、メロディは適度にポップ。
このアルバム、発売からもう15年も経っているとは思えないほど、今聴いても鳥肌が立つ。プロデューサーはミッチ・イースターとドン・ディクソン。今考えるとなんて贅沢な組み合わせなのだろうと思うが、前作“マーマー”の制作時ミッチ・イースターにプロデュースを依頼したら“ひとりじゃ自信がない”ということで先輩のドン・ディクソンが登場し、そのアルバムが好評であったことも手伝い、今回も二人がプロデュースを担当した。
R.E.M.が誰にもマネできないスタイルを確立し、80年代を語る上でも絶対にはずすことのできない名盤。

 ●第14回/ジゴロ・アンツ
ジゴロ・アンツ、フルアルバムとしては4枚目。
ティーンエイジ・ファンクラブ繋がりのGLNSさんが教えてくれたパワーポップ・バンド。メイン・パーソンであるデイヴ・ギブスはヴェルヴェット・クラッシュにも参加していた。
彼らのルーツはビッグ・スター、ビートルズ、バッド・フィンガーらで、バンド名はシド・バレットの曲から拝借したという。そういうバンドが好きな人にはたまらない曲が揃っている。疾走感があり、キャッチーで泣きメロだ。
これを聴かずしてパワー・ポップを語るなかれ、という感じ。しかし私も教えてもらうまで知らなかったのだ(苦笑)。このアルバムのラストを飾る“residue”という曲は、アコースティック調でバッドフィンガーやビッグ・スターらを感じさせる超名曲。最後に、前作“フリッピン・アウト”の評判がいいらしいが私は未聴。是非聴きたい。

 ●第13回/モノクローム・セット
モノクローム・セット、5thアルバム。
ペケ・アモーキ氏が全然原稿を書いてくれないので、代わりに書きます(笑)。
モノクローム・セットは、1978年にアダム&ジ・アンツを脱退したギターのレスター・スクエアが、B−サイズというバンドに所属していたVo.ビド、友人のチャーリー・Xらを誘って結成された。
'80年に名作“ザ・ストレンジブティック”でデビュー。サードアルバムからはチェリーレッドに移籍し、コンピレーションアルバムを発表したあと、紆余曲折を経て本作を発表した。
フェルトのディーバンクに勝るとも劣らないレスターのギターと、ボンベイ生まれのヴォーカル・ビドが織りなす独特のねじれた世界が魅力的だった初期に比べると、明るくそしてポップなアルバムが本作“THE LOST WEEKEND”である。
初期の印象はどちらかというと“裏泣きメロ”だが、このアルバムは堂々の“表泣きメロ”で、モノクローム・セットの入門盤として是非、聴いて欲しいアルバム。運がよければワーナーから発売されている日本盤が買えます。

 ●第12回/フェルト
フェルト、チェリーレッド時代の3rdアルバム。
ジャケット画像は1992年に出た“2 in 1”のCDで、3rdと4thが合体したもの。1st&2ndの“2 in 1”もほとんど同じジャケットなので要注意。
フェルトのサウンドは、初期ギターサウンドと後期オルガンサウンドに大きく分けられるが、このサード・アルバムだけ異質といっても良い。チェリーレッド時代の他のアルバムは“テレヴィジョン”“ヴェルヴェット・アンダーグラウンド”の影響がかなりストレートに表現されていて、ヴォーカルは低音で呟くように、ギターはややサイケデリックでバッキングに徹し決してコードはかき鳴らさない。
このアルバムでもギターはもちろんバッキングに徹しているが、そのメロディーラインがメチャクチャ“泣きメロ”なのである。ヴォーカルの主旋律も他のアルバムに比べれば“明るい”。どうしたんだフェルト!と問いたくなるような仕上がりだが“なんか巷では、こういう明るいの流行ってるんでしょ? 俺たちだってそのくらい作れるよ。どうってことないね!”という答えでも返ってきそうだ。
ローレンスの愁いを帯びたヴォーカルに、キラキラしたディーバンクのギター。ステキぃ〜! 1曲目で聴けるディーバンクの“ハーモニックス奏法?”は痺れます。2曲目の“Sempiternal Darkness”というインスト・ナンバーも泣ける!

 ●第11回/クリス・ヴォン・スナイダーン
サンフランシスコの最重要人物、クリス・ヴォン・スナイダーン。
「パワーポップ最強のモダン志向主唱者」との声も。彼のサウンドやメロディからはバッド・フィンガー、ビートルズ、ビーチボーイズなどの影響が伺える。「グッド・メロディ」直系のシンガーソング・ライターである。
ドリーミーなサウンドとヴォーカル、スウィート&ビターなメロディは、泣きメロ愛好者にはたまらない。卓越したメロディ・センスで有名な初期ジェリーフィッシュのジェイソン・フォークナー、彼と交友の深い“ジェリーフィッシュを凌駕するメロディセンス”の持ち主ブレンダン・ベンソンなど、日本でも人気の高いシンガーソングライターがいるが、クリス・ヴォン・スナイダーンのアルバムを聴いていると、彼らのメロディが全然ポップに聴こえない。たぶん私だけだろうけど…。
残念ながら彼はメジャーな人ではない。しかし全国のHMVやタワーレコードなどで、しっかりとコーナーがあるので興味のある人は聴くように(笑)。特に泣きメロ愛好者は要チェック。

 ●第10回/ディーヴォ
1978年のデビューから数えて3枚目のアルバム。
「ガール・ユー・ウォント」「ホイップ・イット」「フリーダム・オブ・チョイス」の3曲はビデオ・クリップもいかしている。目の焦点が合っていない人々(ホイップ・イット)、異星人のかぶりもの(フリーダム・オブ・チョイス)など、「低予算・ゲテモノ・バカ」が3拍子揃っているが、これを見て笑える人はどこか「壊れている人」であろう(笑)。
オールド・テクノで、どこか安っぽい音作りだがなにしろ「超一級品のポップサウンド」なので、今でも聴ける(実際に聴いている)。それにしてもデビューアルバムで魅せた「ねじれ」ぶりは「変態」へと変わっており、この辺りが好き嫌いの分かれ目であろう。5枚目の「オー・ノー・イッツ・ディーヴォ!」と共に聴いて下さい。

 ●第9回/ハウスマーティンズ
ハウスマーティンズは85年にイングランド北東部のハルで結成された。86年に「LONDON 0 HULL 4」を発表し、ベアネイキッド・レディースがデビューアルバムの「ハローシティ」でサビを引用した「HAPPY HOUR」を全英チャート3位に送り込む。このアルバムに収録されている「CARAVAN OF LOVE」が全英チャート1位を獲得した。88年に「THE PEOPLE WHO GRINNED THEMSELVES TO DEATH」を発表。同アルバム収録の「ME AND THE FARMER」は全英チャート15位。同年解散。
ヴォーカル&ギターのポール・ヒートンとヴォーカル&ドラムスのデイブ・ヘミングウェイは、89年に「ビューティフル・サウス」を結成。現在まで6枚のオリジナルアルバムと1枚のベストアルバムを発売。サウンド的にはハウスマーティンズから「ビート」を弱め、サウンドプロダクションが豪華になり、曲も一本調子ではなくなった。
ベースを担当していたノーマン・クックはビーツ・インターナショナルからファットボーイ・スリムへと幅広く活躍している。
泣きメロのリストでお馴染みのハウスマーティンズ。このアルバムはベストアルバムなので、彼らの凄さを堪能できる一枚。泣きメロ好きは買うべし。

 ●第8回/スクイーズ
1977年のデビュー「スクイーズ」1979年「クール・フォー・キャッツ」から続くスクイーズの3枚目のアルバム。前作から引き続き「ねじれポップ」を展開している。このバンドのグレン・ティルブルックとクリス・ディフォードは「80年代のレノン&マッカートニー」と呼ばれた程の強者なので、ややねじれはあるものの泣きメロ度が高い。
しかし、その才能は次作「イーストサイド・ストーリー(コステロもプロデュースで参加)」で開花する。「イン・クインテンサンス」「テンプテッド(コステロもヴォーカルで参加)」「イズ・ザット・ラブ」などの王道ポップ・テイストは、この「アージーバージー」でも十分伺える。もっとも次作である「イーストサイド・ストーリー」ではキーボードのポール・キャラックの力が多分に影響している。通算5作目では、そのポール・キャラックは参加しておらず、個人的には全体的な印象度が5作中もっとも低い。もっともそれ以降スクイーズを聴くことはなくなったが…。
本作「アージーバージー」とセカンドの「クール・フォー・キャッツ」そして4枚目の「イーストサイド・ストーリー」は、ねじれ&裏ポップ好きでなくとも聴いておきたい一枚。

 ●第7回/ザ・ブームタウンラッツ
このアルバム「ア・トニック・フォー・ザ・トゥループス」はXTCと共に「聴いた瞬間電気が走る」アルバムだった。「ホワイト・ミュージック」と双璧をなすポップ・ワールドが展開されていて、さらに「ねじれ具合」がXTCに勝るとも劣らない。
し・か・し…、誰も正当に評価していないアルバムだ。70年代後半に巻き起こった「ニューウェーヴ」で重要なバンドとして挙げられなければならないバンドだが、「アイルランドからはボブ・ゲルドフ率いるブームタウンラッツが…」てな具合で全く重要視されていない。(怒)
これはひとえに「哀愁のマンデイ」のメガ・ヒットが影響しているのだと思う。生々しい事件をベースにした歌であっただけに、印象も強烈だった。このヒットでボブ・ゲルドフ、ブームタウンラッツを知った人も多いはず。そしてシングルが良かったから、アルバムも良いだろうと思って聴いてみると…。「哀愁のマンデイ」だけ? ふ〜ん。
そうじゃないんだぁ〜!「哀愁のマンデイ」が特殊なんだよぉ〜!という訳で、この「トニック・フォー・ザ・トゥループス」は是非聴いて欲しいアルバムです(なんだかなぁ〜)。
追伸 このアルバムからも全英チャート10位以内の曲がシングルカットされています。

 ●第6回/ポウジーズ
パワーポップなポウジーズ版「イングリッシュ・セツルメント」とでも言える名アルバム。XTCも顔負けの「ポップ万華鏡」を展開している。これがメジャーデビューというのがさらにオドロキの一枚。このアルバムはジョン・レッキーがプロデュースしており、以降の3枚とは明らかに異なっている。
本来のポウジーズの姿は、おそらく以降の3枚に見られる「パワーポップ路線」だと思うが、このアルバムはかなり「アコースティック&フォークロック」色が強く、コーラスもかなり凄い。とにかく美しいのである。そして泣きメロが目白押し。
メロディアスでポップなアルバムは、こういうモノを指すのであるという見本のような一枚。

 ●第5回/ギターウルフ
狼惑星に続く、メジャー第2弾がいよいよ登場。ますますソリッドで、爆音で、ブチ切れている超強力な「思考回路停止ロッキンロール」。さらに付け加えていうならより「ポップ」になったと言えるだろう。ギターウルフを表現するに際して「ポップ」という言葉は適切ではないと思うかも知れないが、ミッシェルガン・エレファントと聴き比べてみると良い。ギターウルフは「ロッキンロール」だから、間違いなくポップな事がわかるだろう。
そして歌詞。相変わらず「俺の心は火星にあるぜ」とか「アクセル全開環七フィーバー」などと「ロッキンロール」が爆発している。さすが狼惑星人(笑)。
そして一番良いのが音楽に対する姿勢。以前CATVでライブを見たことがあるが、とにかく「メチャクチャ」の一言。しかし、ちゃんと音楽をやろうとする姿勢を失っていない。これは重要なことだ。エモーションだけでない、何かを感じる。
最後にヴォーカルの声は「ショーケン」に似ている。

 ●第4回/XTC
XTCファンでこれを聴かないとはもったいない(笑)、XTCのトリビュート盤です。まず驚かされるのは、かなり気合いが入っていること。中でもFreedy Johnstonの“Earn Enough for Us”とThe Rembrantsの“Making Plans for Nigel”の2曲は、相当年季の入ったカヴァーである。ツボも心得ていれば、細かいところまでコピーしている点が凄い。かなりオリジナルを聴きまくった感がある。 この中で一番笑ってしまうものはThey Might Be Giantsがカヴァーしている“25 O'Clock”だろう。ドラムといい、歌い方といい、ベースといい、申し分ない。し・か・し、キーボードがへなちょこすぎる(大爆笑)。聴いているだけで“腰が抜けるほど”のヘロヘロさ(爆爆)。笑ってばかりで申し訳ないのだが、かなり真面目にコピーしているのだけど、とにかく“キーボード”が全てをぶち壊している。というかこれは確信犯だな。最初聞いた時“チャルメラのラッパ”の音かと思ったぞ(笑)。
で、このアルバムの目玉はジョー・ジャクソンがカヴァーする“Statue of Liberty”だ。これは結構いいぞ。まだ買ってない人は輸入レコードショップへゴー!!

 ●第3回/スーパースター
グラスゴー出身、ジョー・マカリンデン率いる4人組のファースト・フルアルバム。このジョー・マカリンデンは、BMXバンディッツやティーンエイジ・ファンクラブにも参加しており、いわゆる「友達の輪」という関係らしい。スーパースターは1992年にミニ・アルバム「グレイテスト・ヒッツVOL1」でデビューしており、本アルバムは最初のフルアルバムということになる。ぱっと聴いた感じは「ギターポップ」なのだが、ストリングスの使い方がかなり効果的で、TFC、BMXバンディッツと共に「ミドルテンポ」なナンバーを美しく聴かせている。泣きメロ度も結構高く、泣きメロファンにもたまらないデキである。このアルバムには“ビッグ・スター”のアレックス・チルトンが参加しており、これも興味深い。このアルバムを聴いた当時、正直言って「がっくり」とした。というのも、「グレイテスト・ヒッツ〜」があまりにもインパクトがあり、過剰な期待をしたせいだと思う。今こうして聴き直してみるとかなり良い曲が目白押しであることに気付く。まあ全14曲中、3曲かぶっているが…。それを差し引いても、かなりの水準である。ミドルテンポのややゆったりとした曲を聴きたい時、やすらぎたい時にとても重宝しているアルバムである。もちろん“ビッグ・スター”や“ティーンエイジ・ファンクラブ”と共に…。

 ●第2回/スモール・フェイセス[トリビュート]
●メンバー
スティーブ・マリオット
ロニー・レイン
ケニー・ジョーンズ
イアン・マクレガン
から成る60年代を代表するモッズ・バンド、スモール・フェイセスのトリビュートアルバム。参加しているのは、プライマルスクリーム、ドッジー、ライド、バズコックス、オーシャンカラーシーン、ホワイトアウト、ジーンなど豪華なメンツ。どのバンドもほとんどアレンジすることなく、オリジナルを忠実にカバーしているところがかわいい。そういえばパンクバンドの「ダムド」のトリビュート盤では、ポウジーズが「スマッシュ・イット・アップ」を完全コピーしていたっけ…。このトリビュート盤の主人公であるスモール・フェイセスのヴォーカル/スティーブ・マリオットはソウルフルな歌い方が特徴で、フェイクなんかも気合いが入っていたから、カバーする側もフェイク入れまくってます。60年代、スモール・フェイセスと雌雄を決していたのが「ザ・フー」で、どちらも日本ではそんなに人気ないけど、今聴いてもダイナミックでカッコイイですね。

 ●第1回/モントローズ・アヴェニュー
●メンバー
スコット・ジェイムス(vo/g/key)
ポール・ウィリアムス(vo/g)
ロブ・リンゼイ・クラーク(vo/g/tam)
ジミー・テイラー(b)
マシュー・エヴェレット(drums)
から成る5人組。ロンドン出身で平均年齢22歳。スコット、ロブが主に作曲を担当し、曲を持ってきた人間が基本的にヴォーカルをするというスタイル。XTCやTFC、さらにはビートルズまで遡れる、オーソドックスなスタイル。但し、こういうバンドは曲の幅が広く、アキさせないアルバム作りをする特徴がある。そのメロディは限りなく「泣きメロ」で、演奏もしっかりしている。日本で最初に発売された編集盤では、持ち前の「泣きメロ」を思う存分発揮し、当然私もノックアウト状態だった。ただ、あまりにも強烈な印象だったため、本アルバムの印象度は編集盤よりも弱い。というのが最初に聴いた印象だった。しかし改めて聴いてみると、新人らしからぬ力量を持っていることを認めざるを得ない。泣きメロ好きは買って損はない。



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